教育失敗学から教育創造学へ   (読書編) ~子どもの教育に情熱をかける人々のために~ 

小学生と大学生の親です。 このブログでは,読書から得られた発見や視点を中心に,子どもの教育について考えていることを書き綴っていきたいと思います。

2014年07月

情報に子どもを埋没させない教育~『日本の将来 教育のすべて』


 すでに,子どもがあふれる情報のなかで迷い子になっていることを自覚している親は多いでしょう。

 親自身もそうなっていることに気づける人は,まだ遅くはありません。

 中学受験をさせること。その目的は何か。

 どのような中学校を選ぶべきか。

 40年も前の本に,こんなことが書かれていました。

 (鈴木重信の言葉)

>亡くなった脳生理学者の時実利彦博士が,「教育には隙間がなければいけない」といわれたことがあります。今の教育は壁で塗りつぶしてしまっているというのですね。隙間があるから,その隙間で子供は工夫したり,考えたりする。わからないからこそ答を出すためにいろいろやるのに,至れり尽せりでべったり塗りつぶしてあり,最初から答が与えられている。これではいけないといわれたことが強く印象に残っています。

 受験の対策で,「ここからここまでやっていれば完璧」というプログラムができあがっています。

 それは,入試問題や入試の選抜の方法に工夫や変化がないからです。

 こういう経験を,中学校に入ってもやらせるのですか。

 高校に進学してもやらせるのですか。

 大学に・・・そして社会人でも・・・。

 中学校や高校の授業で,「隙間」を戦略的に設けている学校を探してみませんか。

 塾と同じような学校が増えているのは,そういう学校を期待する人が多いからですね。
 
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女子の苦手な社会の受験対策~Dream Navi



 女子学院中の入試問題を一部改めたものが紹介されています。

 地図中に日本軍の主な進路が示されており,

 それぞれ,日清戦争,日露戦争,満州事変,日中戦争(1939年頃まで)のうちのどれか,

 という問題でした。

 以前,別の中学校では,鎌倉街道,朝鮮通信使の移動経路などとこの日本軍の進路が出題されていましたが,戸惑う子どもの共通点は,

 おそらくあわせて記憶しているはずの場所(この問題では台湾や遼東半島,海戦のあった日本海,満州=中国東北部,南京など)が地図上で示せないと,正解できなくなってしまう問題だということです。 

 盧溝橋事件の盧溝橋ってどこ?(北京郊外)

 なぜ海軍はバルチック艦隊が対馬海峡を通過すると考えたの?

 イギリスとの関係がどのようにして生かされたの?

 これらの問いは,すべて地図を使って説明できるようにしておきたいことです。

 もしかしたら役に立つのは,中学生が使っている地図帳かもしれません。

 1年早いですが,入手しておくと,いいことあるかも?

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「ど忘れ」撲滅法~記憶力を強くする(ブルーバックス)



 もう「最新」ではない情報かもしれませんが,自分の脳の「海馬」の働きについて理解しておくことは,受験生にとってもムダではない知識になると思います。

 たとえば,短期記憶と長期記憶,「エピソード記憶」と「意味記憶」の違いなど。

 「意味記憶」という用語からは「意味」が想像しにくいですが,

 きっかけがないと思い出せない記憶・・・たとえばクイズなどで問われることで,出てくるような記憶のことです。

 「エピソード記憶」というのはわかりやすくて,物語として語れるような記憶で,

 背景となる景色とか,その前後関係とか,付随的な情報まで取り込まれた,

 「忘れにくい」記憶であるのが特徴です。

 ですから,いかに「意味記憶」ではなく「エピソード記憶」にもっていけるかが勝負なのでしょうが,

 実は,「エピソード記憶」を増やす最善の方法は,「いい先生」の授業を受けることだった,ということが思い当たるでしょう。

 理解しにくい,覚えにくい話は,本当に興味深いエピソードや上手なたとえを使って説明してくれるのが

 「いい先生」です。

 こういう先生の授業を受けた人は,家庭学習をしなくても,テストでいい点がとれるわけです。

 でも,そういう先生に恵まれない人は,自分が「いい先生」になるしかない。

 それは,自分だけの物語でかまわないわけですから,

 「誰も知らないエピソードをもつ」楽しさも味わえるかもしれません。


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センター試験廃止の理由~街場の共同体論(潮出版社)



 内田樹の「学校教育」に対するイメージは,おそらくご自身の悲しい生活体験によって形作られたものなのでしょう。

 同じような体験をしている人は少なくないとは思いますが,そこまで教育はすさんではいないだろう,というのが私の考えです。

 「自分さえよければ」なんていうことを真剣に追求している子どもは,特に成績が上位の子どもの中には,それほど多くは見られません。

 共同体を維持するための強力な「安全弁」がどこかで機能しているのでしょう。

 寝ても覚めても「グローバル化」と口にしている貧困なる精神の人がいますが,

 そういう人間がまず自分自身で「グローバル化」を極めてみてごらん,なんて突き放してながめることができる知性がたくさん存在するのが今の日本です。

 短期間にありとあらゆる?タイプの教師の犯罪が報道され,公教育への不信感は募るばかり。

 しかし,「まさかうちにはそんな教師はいない」と信じている人たちの99%は裏切られていないわけですから・・・・。日本の教育は,世界一忙しい教師たちによって,支えられているわけです。

  さて,紹介した本のなかで,おもしろいのが「コミュニケーション能力」の定義です。

 もし,内田樹流の「コミュニケーション能力」を問う課題が面接試験で出されたら・・・・。

 準備や訓練がなかなかしにくいだけに,緊張も何倍かに高まってしまうでしょうね。

 なかには,極度の緊張で倒れてしまう受験生が出てくるかも。

 政治家の討論会なんかも,力のない人なら・・・・あるいは,イメージの悪化を気にするような人なら・・・・

 絶対に受けないでしょうね。

 失敗をこわがらない,機転をきかせる,そんな力は,普段の学校生活・・・・それも,適度に荒れた学校でこそ,身につきそうなものです。

 「ふつうはしないことを,あえてする」ような事態に,陥らないように配慮しすぎるという習慣を,
 
 どこかで打ち切ることはできるでしょうか。

 残念ながら,ある程度まで進むと,マニュアルは止めどもなく分厚くなり,

 いよいよマニュアルを読む暇がなくなる,といった時点で,

 制度を廃止する・・・・センター試験って本当にそんな流れでなくなるもののような気がしてなりません。

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試験会場にいる「敵」を飲み込む力~日本の身体(新潮社)

日本の身体
内田 樹
新潮社
2014-05-30


 おいおい,そんな方法はどこにも書いていないぞ!と怒られそうなタイトルにしてしまいましたが,

 武道の鍛錬は,こういう「誤った方法」にも使えるようになってしまうわけですね。

>人間が執着を捨て,心も体も透明な状態になると,驚くような力の働きが出てきます。その働きを人を傷つけるようなことや破壊に使わず,建設的な方向に使っていかなければならない,・・・・・

 武道を敵を倒すための道具にはしたくない。

 そういう考えは大事ですが,結果として,武道が敵を倒すための道具になってしまうこともある。

  ある目的のもとで鍛錬して体得した能力は,その目的とは別のことのためにも使えるようになってしまう。

 純粋な心を求めるために武道をする人がいる一方で,

 強くなって敵を倒したい,そのこつを学びたいという欲望を隠して武道を学ぶ人もいる。

 入試の試験会場で,実力を発揮するための「武道の特訓」というのがはやったとしたら,

 「そんなのは邪道だ!」という批判も起こることでしょう。

 目の前の目的のために,最短距離で走り,最高の成果を求めるのは人間らしい「弱さ」です。

 そういう「弱さ」を打ち破ってくれるような「激しいしごき」がはやってしまったのが「部活動」。

 それに似た雰囲気で,「正月特訓」などといって,ホテルに缶詰でやたらと問題を解かせる教育産業。

 もっと自然に,もっと気持ちを楽に,もっと長い期間にわたって心身を鍛えるとしたら,

 やはり場は「学校」が一番かもしれません。

 「学校」での一挙手一投足に,武道の精神を求める・・・・強制ではなく・・・・自己教育力を子どもには育てたいものです。

 実際に,そういう力を育てている小中学校はあるでしょう。

 そういう学校からの受験生は,本当にいい力を発揮してくれているはずです。

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