教育失敗学から教育創造学へ   (読書編) ~子どもの教育に情熱をかける人々のために~ 

小学生と大学生の親です。 このブログでは,読書から得られた発見や視点を中心に,子どもの教育について考えていることを書き綴っていきたいと思います。

2015年05月

90分×20人=1500円~高校生と考える日本の問題点



 90分の講演内容を文字で起こすとせいぜい十数ページであることがわかる。

 高校生の質疑応答と合わせて,20人分で330頁。

 この本をよく1500円で出版してくれたと本当に感謝したい。

 もちろん直に講演を聴くことができた桐光学園の生徒は幸せだが,高校生に全力投球する20人の講師の姿に1冊の本で出会える機会は今までにあっただろうか。

 内田樹や白井聡のような,安倍政権に対して批判的な立場の講師が呼ばれていることも素晴らしい。

 日本の反知性主義への反旗を掲げているようにも見える。

 生徒との質疑応答を柱とした写真家・森山大道のところでは,実際の写真を通してのやりとりでなかったことが残念(国会質疑のように,あらかじめ決められた質問に答えているようだった)だが,読者としては意外な質問によって,「写真家」という一つのジャンルでまとめられる単純な仕事ではないことに気づかされる。

 村上冬樹さんという,一瞬「あれっ」と思ってしまうお名前の校長先生は,中高生に「学び続けること」「生きていくこと」への道標を示してほしい,という要望を講師に語っていたらしい。

 高校生「と」考えるというタイトルが本当にふさわしいかどうかは,質問内容によって判断したいところであるが,講師が「よい質問ですね」とコメントしている部分があったので,くわしくはふれないことにする。

 学校のカリキュラムとしては,おそらく総合の時間を使っての講演会だったのだろう。

 私としては,講演の受けた後の生徒のレポートを学校HPで紹介してもらえるような「教育成果」の公表を期待したい。


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自分の頭で考えられる人をつくる~アクティブラーニング入門



 アクティブラーニングという外来語をタイトルにつける本が次々に出版されている。

 「言語活動」という言葉よりも,「ありがたみ」を感じる外国語だから,売れ行きもよくなるだろう。

 特に「新しいこと」が書いてあるわけではないことが,この本の魅力である。

 また,「教育内容」がほとんど書かれていないのに,「使えそう」な気がするのも魅力であろう。

 アクティブラーニングという言葉の「はやり」はあと数年続くかもしれないが,

 あとがきに示されている「大盛況」という言葉には拍子抜けさせられてしまった。

 フォーラムに150人程度集まれば,「大盛況」となるのが教育の世界の「おしとやか」なところである。

 本づくりとしての難点は,「出典が示されていない」ことであるが,

 教育の世界では,孫引きの孫引きの孫引きくらいいくらでもあるので,仕方がないかもしれない。

 日本の教育現場にもしアクティブラーニングを本気で定着させようとしたら,

 まずは特別活動の時間を重視すべきである。

 「コルブの経験学習モデル」は,まさに特別活動の学習にぴったり適合する。

 部活動でもよい。

 中1女子が亡くなってしまうような事故が防げるようになるだろう。

 「安心安全な場づくり」の重要性は,教室における教科学習だけに限った話ではない。

 パニックゾーンで死なないために,いつでも

 コンフォートゾーンに戻れる安心感をもって,

 自らストレッチゾーンに踏み込める場をつくるべきである。

 続編を楽しみにしたい。

 できれば,この本の薄さなら1000円以下にしてほしい。

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優れた人材を大学院に~大学教授コテンパン・ジョーク集



 教員の国家資格化に向けて,検討を進めていただくのはけっこうなことです。

 そこで忘れてもらっては困るのが,大学院の質です。

 大学院生の質を端的に示すジョークがこれ。

>教室に入って,おはようと私(教育学概論の教授)が言う。

>1年生は,すぐに「おはよう」と返す。

>2年生は,新聞を置いて,テキストを開く。

>3年生は,顔を上げ新聞越しに教授を見る。

>4年生は,机の上の足をそのままに新聞を読み続ける。

>大学院生は,「おはよう」の文字をメモする。


 単なるジョークとは言えない現実があることを,政策立案者は現場を見て知っておくべきでしょう。

 たとえ定員割れになろうとも,大学院の入試を狭き門にしない限り,

 「教育の高度化」などは絵に描いた餅です。

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科学の転換期における研究者思考~研究を深める5つの問い



 理科の先生以外で,ブルーバックスを手に取る教員はあまり多くはないかもしれませんが,教育改革~最も重要なのは昔から言われている教員の意識改革~を進めるためにも,とても重要な1冊であると考えられます。

 もちろん,教育に情熱をかける,すべての人たちにとっても,~子どもに中学受験を経験させるつもりの保護者にも~大切なヒントが得られる内容がつまっています。

 この本の特色は,ページの中にとても読み甲斐のある「注釈」が示されていることです。

 注釈はその都度確認するものではないために,論文でも普通の本でも,一般的には最後(巻末)に置かれています。

 ただ,読者の誤解を避けるため,あるいは,その言葉の意味のとらえ方自体が,実はとても重要である場合には,すぐ目に触れられる場所にあった方が効果的です。

 つまり,この本は,講演などをするときには話の途中で必ずふれているような,本筋とは異なる面が書かれていることにあります。講演では時間の都合でカットされてしまう内容と言ってもよいかもしれません。

 たとえば,研究者にとっての「いい仕事」とは何か,どのレベルまでを想定に「いい仕事」と呼んでいるのかを示してあります。

 注釈の中には,最近の学会の動向もふれられています。

 この本の特色の2番目は,自分自身に問いかけるための質問事項が各章末に示されていることです。

>あなたの研究の目標が達成されれば,なにがどこまで進んだことになるのですか?

 これを受験生の親向けに変換してみれば,

 「子どもが志望校に合格できたら,なにがどこまで進んだことになるのですか?」

 「なにがどこまで」に答えられる受験生の親はどのくらいいるでしょう。

 「東大合格の1歩手前の段階にすぎない」では困るわけです。

>もし研究が進んだら本当にその課題は解決するのですか?

 「その志望校に入学したら,東大に合格できるのですか?」という問いはなぜ必要かといえば,

 進学校で落ちこぼれる子どもの姿を想像できるか?という問題と関連があります。

 進学実績を上げることだけが目標の学校には,想定される上位の子どもだけが「伸ばす」対象です。

 成績下位の子どもたちに目は向いてきません。

>独りよがりの課題設定になっていませんか?

 もうこのくらいでよいでしょう。

 この本の3つめの大きな特色は,「思考」を鍛えること,すなわちこれは異分野との接触,融合をすすめていることです。

 異分野融合を良しとする考え方の背景が2つ紹介されています。

>重層化,複合化する社会的課題に挑むには単一分野では不十分

>異分野と接することでなにかヒントや気づきを得られる


 後者についてはさらに説明が必要だとして,

>異なる分野と接することは異なる「知識」(=単語的な)を得るだけでなく,異なる「考え方」(=文法的な)に触れさせることにもなるのです。

 具体例が紹介されていますが,本書を参考にしていただければと思います。

 最後に,本書のエピローグの中で,報知新聞が1901年に掲載した「二十世紀の豫言」を紹介し,さらに今から100年後の未来社会について,京大研究者が考えたことが紹介されています。

 「未来予測」というのは,科学が広まっていない平安時代から存在し,科学という輪郭が見え始めた江戸時代のものも読んだことがあります。

 どのような未来を望むのか,それが基本的な出発点になって,教育にしろ,科学にしろ,研究を深める動機になることが自覚できました。

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学生の4分の3が公務員を希望する国とは?~テクノロジーが雇用の75%を奪う

テクノロジーが雇用の75%を奪う
マーティン・フォード
朝日新聞出版
2015-02-20



 どちらも実際には読んでいない本なので恐縮ですが,これまでも,似たような内容は書かれてきたことと思います。今後も増え続けるのでしょうか。

 雑誌のレビューで目次と見出しを見ていると,読むのが怖くなってくる本です。

 タイトルにした内容は,レビューで紹介されている,フランスの話でした。

>フランスでは学生の4分の3が政府機関で働きたいそうである。米国も同様になるとのことだ。

 雇用の喪失→消費の喪失→市場経済そのものの危機

 というのはわかりやすい未来予想ですが,

 「雇用の喪失」がどれほど現実的な問題になっていくのか。

 数十年前とたいして変わらない原理で初等教育,中等教育,そして大学での教育を行っている日本にとって,

 「このままでよいのか」というのは素朴に感じてくる疑問です。

 教育の問題でいえば,都立高校では,塾のノウハウを高校の先生に学ばせている。

 教員採用試験を使って独自に採用する人間が必要なくなる時代がそこまで来ていると考えることもできます。

 センター試験を廃止し,登場する新試験にしても,学校の教師よりも早く塾産業が対策をつくります。

 AO入試もしかり。学校で学ぶよりも,塾で対策を教えてもらった方が,ためになる,という時代は

 すでに「教育の終わり」を表しているというのが私の実感です。

 そのうち,午前中は塾に通って学習することを許可する高校が出現しかねません。

 高校は,学校行事や部活動だけを行う場になっていく?

 公務員は増えていっても,教員の民間委託は増えていく?


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