教育失敗学から教育創造学へ   (読書編) ~子どもの教育に情熱をかける人々のために~ 

小学生と大学生の親です。 このブログでは,読書から得られた発見や視点を中心に,子どもの教育について考えていることを書き綴っていきたいと思います。

2015年06月

混乱から道が開ける~小学校4年生の世界平和

小学4年生の世界平和 (ノンフィクション単行本)
ジョン・ハンター
KADOKAWA/角川書店
2014-03-26


 予備校の授業ではもちろん,内容が詰め込まれた日本の学校教育の授業では,「混乱」は避けるべきものと思われています。

 かつて私が指導主事のときに,算数の指導に苦労している教師に助言したことがあった。

 「教師も授業で混乱してかわない。一番よくないのは,わかっていないのにわかったつもりになる子どもをつくることだ。教師の仕事は子どもをあっさりと納得させることではなく,子ども自身が本当に納得できる説明を自らできるようになるのを待つことだ」

 そして次の日の授業で,本当に混乱している姿をみせてくれた。

 子どもにはあきれられてしまったようだが,わからないものをわからないと言える子どもに成長させてくれる先生になっていることを確信している。

 さて,本編での引用が多くなっていたので,こちらに続きを掲載させていただくことにする。

 教師だけでなく,親にも知っておいてほしいことである。

>人生の歩みの中で,混乱はやがて学ぶ側の技にもなってくる。矛盾するデータや思うような結果の出ない実験と格闘する科学者や,どうしてもしっくりこない詩やうまくはまらないメロディに苦悩する芸術家,不公正なシステムを転換する方法や,新たな政策に支持を集める方法を必死に追い求める政治改革者など。こうした人たちは誰もが長く,苦しく,しかし最終的には実り多い混乱にどっぷり浸かっている。そうした不快感に進んで耐え,問題と格闘し続ける意欲こそ,私たちが学ぶべきものであり,彼らに大きな成果をもたらすものだ。

>だから私はこの混乱の段階は大いに価値があると思うようになった。私たちが本当の力を発揮できるように成長する時間を与えてくれるし,目前の問題に本当にふさわしい,深くて最良の解決策にたどり着かせてくれる。もしパブロが困惑を回避できていたら,もっと手っとり早い鋭い答えを,もっと早く出していたかもしれない。そんな答えは「及第点」を得られたかもしれないが,最終的に彼が獲得したあくまでも深い洞察には,必ずしも到達し得なかったのではないだろうか。

>道半ばで安易な即席の答えに安住することなく,最高で最も真実なる答えを見つける力と勇気を私たち自身の内に見出すこと・・・・そのためには,ものごとをスローダウンさせるために,時として混乱が必要不可欠なこともある。


 私が一押しの教員採用試験・論文問題は,これ。

 「上の文章を読み,あなたがこれまでにしてきたパブロと似たような経験について書きなさい」

 経験のない人間に実践者になることを要求できない。


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矛盾したことが同時に成立している社会への理解力を高めるには~思考力

思考力
外山 滋比古
さくら舎
2013-08-05


 中学生のころに先生から聞いた話か,外山先生の別の本から読んだ話か定かではないが,

 「転石,苔を生ぜず」が日米で全く別の意味になるという話はご存じの方も多いだろう。

 日本は「石の上にも三年」と同じような意味で用いられる。

 アメリカでのローリングストーンは,飛躍するために欠かせない行動を促している。

 気候の違いで,苔が「美しいもの」に見える国と,「不潔な邪魔もの」に見える国との違いとみることもできようが,

 実はこういう矛盾は,日米という国の違いではなく,同じ日本の社会の中にも存在している,という認識をしっかりと持てるようになるのは何歳ぐらいになってからだろうか。

>われわれの生活の中には,矛盾したことも,反対のことも,ごく普通に共存している。昔の人は,知識の形を,できるだけ生活の経験に即したものにしていた。それが知恵である。

 ことわざにしても,たんなる知識ではない。経験を合わせもっているから,ひとつのことわざがあると,かならずといっていいほど,それと矛盾した意味をもつことわざができる。

 たとえば,「三人寄れば文殊の知恵」といって,一人より三人いたほうがいい知恵が生まれるといっているかと思えば,「船多くして船山に登る」と,知恵のある人がたくさん集まるとなにも決めることができなくなり,とんでもないことになってしまうといったりする。


  外山先生は,今の時代は昔より知識が増えたのに,知恵が失われていると嘆いている。

 ものごとを単純に割り切ろうとし,経験を通さず,知識だけで決めつめようとする人間が増えている。

 昔は,大学を出たばかりの教員は,バカにされてきた。

 今は,バカにできる教員がいなくなった。

 経験も,何も考えないで過ごしていると,知識と有機的な結びつきができず,

 何をどう批判されているかすらわからない人間になってしまう。

 まだ問題が起こっていないことについて指摘された場合は,

 「原因」が問われているのではなく,「目的」が問われているのである。

 「やってみないとわからない」という反論も的外れであることがわからない。

 自分にとって理解可能な思考回路でしか語れない人に,他人の思考回路を非難する資格はない。


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真実は「この辺に」で~思考力の磨き方



 報道や出版の業界では,おそらく「真実はズバリこれだ」という断定・言い切りの表現法がもてはやされる。

 もちろんその意見を真に受けたり,言いなりになったりする人は少数だろうが,

 そういう言い方をすることだけが「人気を集める方法」になるような社会ではいけないだろう。

 「スバリ」は嘘になる,という正直な人間が,決して軽視されない社会をつくっていくことが重要ではないか。

 自分の考えをもつことが大事である。

 それを,AかBか,白黒はっきりさせろ,と強要されるのはいかがなものか。

>「もっとズバリいってくれ」と頼まれることがあるが,「ズバリ」は嘘になる。「真実はここだ」という学者はインチキで,実際は「この辺」としかいいようがない。
 
 「これが答だ」といっても,明日にはまた変わる。だから「この辺」が答えなのである。


 大地震の予想が当たった,はずれたがニュースになることがあるが,「この辺」という意味では,全員予言者になれるという話でもある。

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スキルより情報,情報より情緒~うるわしき戦後日本

うるわしき戦後日本 (PHP新書)
ドナルド・キーン
PHP研究所
2014-11-15


 世界中で「MUJI」というブランドが親しまれていることは失礼ながら知りませんでした。

 無印良品。「無印」なのにブランドになるという逆説的なところが,「日本文化」の奥深さだ,という指摘は,

 足利義政が一代で築いた東山文化を引き合いに出されると,なるほどと思ってしまいます。

 日本人の奥底に流れ続けている「簡素な美」という美意識が,このブランドを育てているというのは否定しにくい仮説です。

 「美意識の勝利」などとまで言ってしまうのはどうかと思いますが。

 この本には,「情報より情緒」という内容が収められていますが,これからの教育を考える上で,どうにも逆方向にしか動いていないような気がしたので記事にしておきました。

 これからの教育を考えている人は,何となく「デジタル世代」の臭いがプンプンしているのです。

 それも,けっこうな歳になってからパソコンをいじりだした世代の人間たちです。

 「こうすればこうなる」という単純な発想で,教育も語りたがる。

 情緒よりも情報が大事という発想をさらに超えて,

 情報よりもスキルだ,と言い始めている人間たちが増えている。

 それなりに経験を重ねた教師たちがこれに乗っかっているのが危険なところで,

 インターネットで検索すれば何か答が出てくるというコピペしかできない教師たちが,

 同様に安易な気持ちで「こうすればうまくいく」というノウハウ本に飛びついていく。

 子どもはこういう操作主義的な教師はすぐに見抜いてしまい,もっともっと嫌いになっていくのに。

 スキルが大事,といっている教師でも,実は情報なり情緒なりを非常に大事にしていたりもする。

 それなのに,情緒の世界に踏み込むと,経験のない教師たちはお手上げになってしまう。

 売れない本より売れる本を出版社はつくるのです。

 小学校向けの本は,「無印」どころではない。

 本のタイトルにまで著者名が入っており,表紙には写真まで掲載している。

 編集者から,「これでないと売れない」という「証言」をとったことがありました。

 「東山文化と教育の心」「禅と教育の精神」なんて本は売れないでしょう。

 しかし,教師たちのスキルに走ろうとする安易さに警鐘を鳴らすことは,絶対的に必要なことだと考えています。

 もちろん,それはスキルに走る受験勉強の結果もたらされたものであり,スキルのおかげで短期的には成功感が得られるという「麻薬」的な魅力があるからだということも忘れてはなりません。

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リーダーシップの本質~チームの力



 『新しいリーダーシップ論』とか,『リーダーシップの本質』というタイトルでもかまわない内容だと思われるが,

 実際は『チームの力』となっているところに,著者が考えるリーダーシップの本質が隠されているのだろう。

>リーダーシップの方法論が世に溢れているのに,なぜまったく役に立たないのかがわかるだろう。それは何かを言う以前に,“誰が言うか”によって,まったく意味が変わってきてしまうためだ。

 などは痛烈な言葉である。

 リーダーの人格がリーダーシップの基点になる,という考え方があるから,

 どうしたら人格を高めることができるか,という問いに行き着いていく。

 自分なりにできる範囲のことから,力を発揮していく。

 できる人の近くにいる。

 この2つの有効性を,子どものころから実行して身をもって知っている人は強い。

 人格の大切さに加え,本書では価値の原理,方法(特定の状況において何からの目的を達成する手段)の原理,戦略(状況と目的を見定めながら有効な指標を追求,選択,創出し続けること)の原理が整理されているが,これらを指針として,本質からブレることなく目的達成のために誠実に尽力することが,リーダーシップを発揮するために欠かせないとしている。

 『誠実』というと,どの政治家も一律に口にしたり,一昔前の不倫騒動で流行した言葉としての記憶が蘇ってしまったりするために,どこか「軽い」イメージも伴ってしまうのが哀しいところではあるが。

 今は,『不誠実』な態度はすぐにネットで広がり,自分のクビを締めつけ命取りになる時代になった。

 『不誠実』な人の近くには『不誠実』な人が集まる,と非難されることは痛い。が,それが本当の姿かもしれない。

 組織は「始めるとき」に最もまとまりやすい。

 メンバーが高い関心をもって,かつ,それを共有化できるからである。

 組織を「維持,発展させるとき」が最も難しい。

 メンバーの関心が失われたり,方向性が分かれたりするからである。

 目的が変わったのに方法を変えない,

 状況が変わったのに方法を変えない,

 などのリーダーの欠点は見えやすいが,

 目的と状況が同時に変わったため,方法を変えないことが最も適切な判断のように見えてしまうこともある。

 変革期を乗り切れるリーダーを育成するために,

 制度を強制的にいじることに意味があるという論理は成立するだろうか。

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