教育失敗学から教育創造学へ   (読書編) ~子どもの教育に情熱をかける人々のために~ 

小学生と大学生の親です。 このブログでは,読書から得られた発見や視点を中心に,子どもの教育について考えていることを書き綴っていきたいと思います。

2015年07月

清明上河図と日本の「国風文化」~外交から貿易への大転換


岳飛伝 -THE LAST HERO- DVD-SET1
ホァン・シャオミン
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
2015-06-03


 『岳飛伝』というDVDをみていたら,

 12世紀頃の作とされる清明上河図を金の皇族が手に取る場面がありました。

 何だかカラーコピー用紙のようなきらめき感があったので気を削がれましたが,

 日本で言えば江戸時代の日本橋や江戸の町の様子が描かれていた絵でした。 

 宋と日本とのかかわりで最も知られているのは平清盛の日宋貿易でしょうが,

 その発展を支えたもののなかに,貴族たちの「唐物」への熱望があったことが

 知られています。

 「唐物」への憧れは,「国風文化」の時代にも基盤となっており,その背景には

 アジアの海域世界に大きく展開した海上交易がありました。
 
 「唐物」は当時の貴族にとって重要な「威信財」であり,藤原道長はこれを

 政治的に利用していたようです。『源氏物語』にも,『御堂関白記』にも,

 こうした「唐物」が登場しています。

>そもそも「国風文化」という用語・観念自体が,明治以降の国民国家を支える「一国史」的な歴史観や,「一国文学」的な言語・文学観にもとづいて新たに創出されたものであるという点も,忘れてはならないだろう。

 現在の歴史の常識は,

>「国風文化」はけっして「鎖国」的に閉じられた日本のなかで自生的に発生し,発展したものではなかった。

 ということです。

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人間の本質とは何か?~キングダム39巻



 人間はなぜお互いに殺し合いをするのか。

 戦いをなくすことはできないのか。

 人間がもつ我欲の根源は何か。

 「貨幣」が人間を狂わせるのか。

 500年にわたる戦争の歴史から,人間は何を学ぶことができたのか。

 フィクションではありますが統一をめざす秦の政権中枢の動きからは目が離せません。

 そもそも「天下統一」という発想はどこからきたのか。

 主に戦闘シーンで活躍する「信」と政敵との戦いに身を置く「政」という

 二人の主人公のどちらが本当の「人間」を見つめているのか。

 戦争に少しずつ近づいていく気がする日本から発信しているこの物語が,

 世界にどのようなメッセージを発していくことになるのか。

 真の英雄とは何か。

 いろいろと考えさせてくれるマンガです。

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ピケティ人気は国が演出?~崩れゆく世界 生き延びる知恵

崩れゆく世界 生き延びる知恵
副島 隆彦
日本文芸社
2015-05-27


 安倍政権に対する痛烈な批判が展開される対談本で,

 自由主義の国でなければ出版できない内容です。

 つくづく,「日本はまだよい国だ」と思うと同時に,

 「これからの日本と世界はどうなるのか」という不安もかき立てられてしまいます。

 本書の冒頭では,「核不拡散体制の崩壊」のシナリオが描かれていますが,新聞報道を知るだけで,中学生でもわかる話です。

 今まで,「国連」という訳語はおかしい,という主張を耳にしたことがある人は,どのくらいいるでしょうか。

 The United Nations ですから,「国際」に該当する言葉はどこにもありません。

 戦後の国際政治を考える上で,「国連」設立の経緯を知っておくことは重要です。

>副島 国連は正しくは連合諸国と訳し直すべきです。連合諸国(×国連)は,国際的な強制執行活動の機関なのです。ただの親善団体ではありません。言うことを聞かないと,共同軍事力で抑えに来る。

  佐藤優は

>歴史は反復する。しかし,まったく同じ形で繰り返されることはない。

 こういうときに重要なのは,アナロジーを適用することだ。アナロジーとは,論理に即して物事を考察するということだ。


 と主張していますが,「景気回復,この道しかない」という自民党の選挙ポスターのコピーについて,「この道しかない」というのは,ソ連崩壊の3年前にゴルバチョフ政権が考えたコピーと同じであることなどを紹介してくれています。

>そもそも「この道しかない」などという言葉は,民主主義国のスローガンとしてあり得ません。「ダメなものはダメ」なら,まだあり得ます。いくつかの選択肢のうちで,やはり,やってはいけないことはあるということですから。

 しかし「この道しかない」は,それ以外の選択肢はないということになります。これではまるで全体主義国です。


 中学生でも,世界恐慌によって深刻な景気悪化が続いたことが,世界大戦が再び起こった原因の一つとして考えられることを知っています。

 私が個人的に注目したのは,ピケティ理論に対する両者のコメントでした。

>副島 ピケティの言っているのは,資本の原始的蓄積の機会を奪われているということです。どんな人でも努力すれば,資本家(金持ち)になれるのですよ,という夢が与えられなくなる,とピケティは言っています。だから,資本税(富裕層への新たな資産課税)を課すべきだ,とピケティは書いている。

 佐藤 それは,どんな人に対しても国が資本を与えてくれる場合があるということですね。いずれにせよ,これは国家統制の極端な強化ということです。


 国にとって都合のよいことにしか,お金を出さない。

 国立大学などは,文科省の言いなりです。

 まさに今の政府の方針にぴったりのことを実現するためにも,ピケティ理論は都合がよい。

 ピケティの本をたくさん買ってベストセラーにしたのは・・・。


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漁師になりたい子どもなんていない?~社会科教育

社会科教育 2015年 08月号
明治図書出版
2015-07-13


 ご自身の教師歴,研究歴をご披露されていた大学の先生がいらっしゃって,読み甲斐のある8月号でした。

 小中学校の社会科教育がどうなっているのか,何を目指しているのかがわかる雑誌ですので,

 子どものころ,社会が得意だったが,子どもが嫌いでいるのが残念でならない方,

 社会が苦手だったので,子どもにはぜひとも好きになってほしいと願っている方,

 ぜひご覧になってください。元気がでるかもしれません。

 そして,お子様の担任の先生に強烈なプレッシャーをかけることができるようになるかもしれません。

 ただし,漁業を営んでいる方には,注意が必要な記事があります。

 ある大学の先生が,

 「小学生で漁師になろうとしている子どもなんていないんだから,多様な漁法なんかを教えても・・・」

 なんていうことを書いています。

 言語道断です。

 この雑誌は,何でも言いたい放題のところが魅力でもあり,残念でもあります。

 こんな大学の教師に「高等教育」をうけて教師になった担任にはあたらないことを願いたいものです。

 もちろん,日経に「工業化する漁業」に関連した記事があり,子どもにはどんな角度からでも社会のあり方にせまることが可能です。「いろいろなことができるのに,漁法にこだわる意味はない」という発言は,日本の文化を軽視するタイプの大学教師がよくするものです。

 水俣病の発生からしばらくたったころ,省庁連絡会というものが開かれ,

 当時の通産省,経済企画庁,厚生省(食品衛生課),水産庁の役人が集まり,

 水産庁の役人は,通産省の幹部から,

 「日本は工業立国,貿易立国でいくんだから,海が汚れて魚がとれなくなっても,

 外国の海でとればいいじゃないか」と言われたそうです。

 こういう発言がすぐに思い浮かびました。

 海で囲まれている日本で,漁業を教えなくなることが不安でなりません。

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『いじめ』と戦争の共通点~人類はなぜ戦争を繰り返すのか



 とてもチームワークがよいと担任が自負していた学級で,深刻な『いじめ』が発覚することがある。

 実は「チームワークの良さ」とは,「だれかを排除することに対する協調行動が徹底していた」ことを表していた。

 知らないのは,担任だけだった,という情けない状況である。

 『いじめ』の被害者にとって,「チームワークがよいクラス」と評されることが,

 どれだけ苦痛だったか,想像できるだろうか。

 「すばらしいクラスの作り方」といった本を出版している教師の学級で,こんなことが起きると,

 『いじめ』られている子どもは本当に浮かばれない。

 『いじめ』の深刻化は,『いじめ』られている子どもだけを除くと,

 結束力の強固さという「担任が求めていた姿」と全く同じになる。

>自己犠牲・名誉・尊厳・友愛・団結・雄々しさ・ヒロイズムのような,いかにも人間にふさわしい精神の発揮がみられるのも,戦争である。こういう精神は,平時ではなかなかお目にかかれない。

 戦争中にふれることができる「人間の素晴らしさ」とは,「人間の醜さ」を別の面から見たときの姿に過ぎない。

 最も子どもたちが生き生きとしているときこそ,見逃してはならないと気をつけるべきものが

 『いじめ』である。

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