教育失敗学から教育創造学へ   (読書編) ~子どもの教育に情熱をかける人々のために~ 

小学生と大学生の親です。 このブログでは,読書から得られた発見や視点を中心に,子どもの教育について考えていることを書き綴っていきたいと思います。

2016年04月

歴史の本質を知る授業~日本人だけが知らない「本当の世界史」



 
三酔人経綸問答 (岩波文庫)
中江 兆民
岩波書店
1965-03-16



 帝国書院版の中学校社会科歴史的分野の教科書では,中江兆民の『三酔人経綸問答』が紹介されている。

 近代の学習の導入では,両極端である「紳士君」「豪傑君」に対し,「どちら側でもない現実的な選択肢は何か」を考えさせることができる。

>剝き出しのパワーポリティクスを主張する豪傑君と国際法による人道外交が成立すると説く洋学紳士君の論争を,中庸的な南海先生が止揚するという形式で,物質力のみでも正義公道のみでも立ち行かないことを説いている。

 国際法を理解しない豪傑君も,逆に絶対視する洋学紳士君も,いずれも国際政治の現実では間違いなのである。その体現者がまさに,明治の日本だった。


 まさに授業で実感させたい要点が表現されている。

 中学生レベルでも,「国際法」と呼ばれるものが実質的にだれの何のためのものかを理解させることは重要だろう。

>ウェストファリア体制以来,西洋人は自分たちの内輪での欧州公法を「文明」として,外部社会の有色人種に押しつけてきた。

 確かにヨーロッパ内部での戦争では国際法が整備されていったが,外部への植民地戦争では宗教戦争の時代とまったく変わらない非法を続けていた。キリスト教徒でも白人でもない有色人種など,人間ではないとの扱いだった。

 この二重基準に,「我々も人間である」と異を唱えたのが日本人だったのである。ここに,国際法そのものが変容した。


 日露戦争がどういうことがらの「総仕上げ」となったのか。

>有色人種である日本がロシアに勝利したからこそ,国際法が真の国際社会の法となったのである。二百年に及ぶヨーロッパの世界支配に風穴が開いた。

 日本は西洋の衝撃による「文明」を受容しつつ,ヨーロッパ人以上の模範生となったのである。


 このような「歴史の本質」に子どもが気づくことができる教材は,実は教科書だけでも十分である。

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新潟と大阪の大学の違いがよくわかる本~中学社会科アクティブ・ラーニング発問



 帯の大杉先生やカバーの樋口先生からの紹介文があるから素晴らしいというわけではない。

 数多くの現場教員の知恵がつまっている本だから,素晴らしいと評価できる。

 もちろん,突っ込みどころは随所にある。

 発問自体に教師のバイアスがかかってしまっているものが散見される。

 それでも,基本データ(重要用語)の確認と生徒が学習活動に熱中できそうな発問を紹介してくれるというスタイルから,具体的な事例を知ることができるし発問のパターンを知ることもできる。

 発問は,

 「事実を確認する」発問

 「事実の深読み」調べ発問

 アクティブ・ラーニングに発展する発問

 に分けられ,それぞれにいくつかの具体的な発問事例が示されている。

 結局,「アクティブ・ラーニング」をしているのは教師の方ではないか,という批判も成り立ちうるが,

 こういう「発問」=「答えを見出すべき課題」を思いつくだけでも教師としては立派な存在といえる。

 より指導者としての力量をUPさせたければ,

 ここに紹介された「発問」を生徒の方から教師の方に投げかけられるような「教材」を用意していく努力をすべきである。

 「自ら問い,自ら考える」力を社会科は育ててあげなければならない。

 教師が作った穴埋めプリントを教師内をぶらぶら歩きまわりながら消化していくような姿は絶対に見たくない。

 生徒が囚人か奴隷にしか見えない「課題学習」は即刻やめてほしい。 

 厳しい現場が多い大阪の先生方だからこそ,見いだせるものがあったのだろうと思われる。


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日本を救ったユダヤ人~お金の流れで読む日本の歴史



 中学校地理的分野の生徒の調べ学習の課題を紹介した授業で,たまたま「ポンド」が話題になりました。

 「なぜイギリスはユーロを使わないのか」という点について,さまざまな角度から考察した作品でした。

 おまけで,「しばらく前の日本銀行券1万円札が聖徳太子で,千円札が伊藤博文だったが,

 なぜ逆ではないのか」という質問から,通貨は「国民」にある「観念」を共有化させる道具にもなっている,

 という話題に話が逸れていき,さらに,

 小学校6年生のときに学習した「日清戦争」の賠償金は,どこにどのようなお金で支払われたのか?

 また,「日露戦争」の戦費は,どのようにして確保できたのか?・・・・・脱線は続きます。

 もちろんこれに答えられる中学生はごくわずかでしょう。

 50年前,イスラエルの駐日大使が昭和天皇から「日本人はユダヤ民族に感謝の念を忘れません。かつてシフ氏に大変お世話になりました」という発言を受けたという話が伝わっているようです。

 シフ氏とはだれか?

 なぜ,シフ氏は強国ロシアと戦争しようとする日本への融資を決めたのか?

 日英同盟を結んでいるイギリスでさえ,はじめは融資をしぶっていたのに・・・・。

 歴史はすべてが「お金」で動かされるわけではありませんが,

 超強力な「助っ人」になった事例はたくさんみつかるでしょう。

 「お金」から見る日本の通史で,歴史の流れがとてもよく理解できるようになります。


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鎌倉時代の御恩と奉公の関係について説明できる~アクティブ・ラーニング 高校地歴公民



 授業のポイント「評価と課題を一致させよう」で紹介されている「課題」とは・・・
 
>全員が鎌倉時代の御恩と奉公の関係について説明できる

 この課題,小学校6年生でも学習するのですが,高校の日本史でどのレベルまで説明できることを求めているかは本書ではわかりません。

 本書の表紙にも,「課題も授業も事例が満載」と書かれていますが,本を開けてみてびっくりです。

 この本のおかげで,「不当表示」に関する法令に興味を抱くことができました。

 感謝です。

 公民分野でワークシートが紹介されていますが,「TPP」を「TOPP」と誤植している点については,それに気づいて「O」を消している作品も掲載されており,生徒の注意力を高めるという点では「よい教材」ですが,

 小選挙区制度で死票が多いからといって「国民の意見を反映したものとは言えない」と結論づけるのはいかがなものでしょう。

 選挙制度の課題を認識しているかどうかは,なぜ衆議院で小選挙区比例代表並立制が採用されているのかなどを扱うべきであり,残念ながら,こうした学習活動も高校公民ではなく,中学校公民的分野で扱う内容です。


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隠された『学び合い』~アクティブ・ラーニング 中学社会



 「協働的」ではあっても「主体的」ではない学習が,『学び合い』である。

 著者名よりも大きな活字で示されている「シリーズ編集」者名で簡単にばれてしまうのだが,

 「売れ行き」のマイナス要因を削除したのであろうか,『学び合い』という文字は秘匿されている。

 穴埋めプリントが配られる→お互いに穴埋めの答えを探し合う→できているかどうかを確かめる

 こういう活動は,目と腕と口と耳を使う協働作業ではあるが,知的な活動とは言いにくいから,

 「アクティブ・ラーニング」と呼ぶのはいかがなものか。

 本書で説明されている「課題」の質も,「アクティブ・ラーニング」と呼ぶには不適切なものが見られる。

>鎖国下の日本は長崎,対馬,琉球,松前を通じて世界とどのような交流・交易をしていたのか絵や図と言葉で説明できる。

 おそらく,教科書には「四つの窓口」を示す地図が掲載されているから,これを見れば学習は終わってしまう。

 10分で終わりである。

 頭を使う学習にするためには,もっと歴史の本質に迫れるような「問い」「課題」が必要なのである。

 そもそも,長崎,対馬,琉球,松前というあげ方自体がおかしい。

 少なくとも琉球は「薩摩」に訂正すべきだろう。

 「どのような交流」だけではなく,「なぜそのような交流」だったのかを説明させることで,

 「江戸幕府の政治の特色を考え,幕府と藩による支配が確立したことが理解できる」ようになるのである。

 長崎と対馬・薩摩・松前の違いは何か。

 長崎で日本と貿易をするヨーロッパの国がオランダだけになったのはなぜか。

 貿易以外で,オランダを通して幕府が独占しようとしていたものは何か。それはなぜか。

 清(中国)との関係はどうなっていたのか。

 朝鮮と琉球との交流の違いとは何か。それはなぜか。

 もしこれらの問いを教師が投げかけることができなかったら,生徒がそれらに答えられることが重要だいうことに気づきもせず,定期考査で問われることなく,入試で初めて聞かれて「?」となってしまうのである。

 中学校3年間で合計350時間も学ぶ地理・歴史・公民の「授業の実例」が各4個ずつしかないのに,表紙には「課題も授業も事例が満載!」などと書かれている。

 『学び合い』関係者の「満載」の基準がよくわかったが,常識の範囲には達していない。

 学陽書房さんに文句を言わざるを得ないか・・・。 
 
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