教育失敗学から教育創造学へ   (読書編) ~子どもの教育に情熱をかける人々のために~ 

小学生と大学生の親です。 このブログでは,読書から得られた発見や視点を中心に,子どもの教育について考えていることを書き綴っていきたいと思います。

2016年11月

中学受験させる本当の意義は,「電車・バス通学」にあった?~直感力を高める数学脳のつくりかた

直感力を高める 数学脳のつくりかた
バーバラ オークリー
河出書房新社
2016-05-16





 この本には,ほとんど「数学」の問題は登場しない。

 子どものときに「数学」ができなかった著者が,どうやって様々な能力を身につけてきたかが紹介されている。

 早い話が「頭の使い方」の本である。

 参考になるのは,本の構成の仕方。

 この人が「先生」になれば,とても上手に子どもたちを教育してくれるであろうことがよくわかる。

 「教科書がこうなっていれば,もっと子どもたちは勉強ができるようになるのでは」と思えるようなつくりである。

 
 この本から,自分の経験と重なるところを見つけることができた。

 地方には,バスで公立の小中学校に通っている子どももいるだろうが,一般的には通学定期券をもつ小学生や中学生は,受験をして国立や私立の小中学校に通う子どもだろう。

 通勤をしている大人たちはみんなそうだろうが,通勤や通学に時間をとられることは,人生にとってかなりのロスではないか,と私も真剣に考えていた。

 私はたまたま新採で自宅から自転車で10分もかからない公立中学校に赴任したが,2校目も同じ地域を希望したら,こちらも自転車で15分以内で着く場所だった。

 これ以上近い職場はないと思っていたが,次の職場は官舎から何と歩いて5分の場所になった。

 ただ,やたらと出張が多い職場で,社会人になって初めて「長時間の通勤」というより,ほとんど毎週,旅行に出かけているような2年間を過ごした。

 そのおかげで,読書の時間が何倍にも増えた。その習慣は今でも続いている。

 当時,読書をしながら,中学校時代を思い起こしていた。

 さて,「数学脳」と通勤・通学に何の関係があるのか,と思われるだろう。

 私は中学受験をし,電車とバスで通学していた。

 バスは座れたので睡眠不足を補うか,ぼーっとして過ごすことが多かったが,

 バスを降りて地下鉄の入口に向かう途中に大きな書店があり,

 ここで新書を毎日1冊買って,帰りの電車で読むのが日課だった。

 こうした通学時間のうちで,最も貴重だった時間がわかった。

 それは,バスの中でぼーっとしていた時間である。

 この本を読んで,自分がただぼーっとしていただけではなかったことに気づいた。

 脳はしっかりといろいろな整理と準備にとりかかっていたのである。

 地域の中学校に通っていたら,きっとゲームセンターに立ち寄って遊んでいるような時間が多かっただろう。

 バスに乗っている30分間に,今に生きるものが培われていたのだった。

 それは何か?

 受験勉強はつらかったが,かえがえのないものを手に入れていたことがわかった。


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ポスト・アメリカはない~先生も知らない世界史

先生も知らない世界史 (日経プレミアシリーズ)
玉木 俊明
日本経済新聞出版社
2016-10-12


 歴史は裏話で盛り上がるのも面白いのでしょうが,やはりより「ためになる」のは,過去と現在を踏まえた未来への展望に結びつけることです。

 著者は,「ポスト・アメリカ」はない,と主張しています。

 もはや,近代世界システムは,その前提としている仕組みを失い始めている。

 これまでは,国際分業体制によって,支配する側と収奪される側の関係がはっきり目で見えるものだった。
 
 「中核国」と「周辺国」という区別ができた。

 しかし今では,一般的な人々が,インターネットを使って,知らず知らずのうちに「支配し収奪する側」に立ってしまっていることがある。それに気づけない時代である。・・・という話です。

 新たに開拓できる場所がなくなってしまったあとは,どうなるか。

 成長が止まります。

 でも,利潤は生み出されなければならない。

 「飽くなき利潤追求」が近代世界システムの特徴です。

 実際に,そのために働いている人たちが今でもたくさんいる。

 新たな開拓場所がなくなれば,新たな利潤を生み出す場所は,今働いている人たちの賃金しかなくなっていく。

 格差が拡大していることに気づき始めているものの,あと10年後にどうなっているかを真剣に考えようとする人は少ないのかもしれません。

 税金で動いている国立大学法人も,運営交付金を減らされて,人件費の削減に踏み出さなければならない。

 クビはきれないから,辞めた後の補充をなくすしかない。

 期限付き採用を増やすしかない。

 そういう時代です。

 まだ管理職の立場になっていない人たちに,今から今までになかった「教育」を施さないと,手遅れになるというか,そもそも管理職になる人がいなくなってしまう時代になる。

 世界の潮流は変わろうとしています。

 イギリスとアメリカの動きが,すべてを象徴していた,と10年後に書く人がいそうな気がします。

 もうすでに書いている人もいる。

 未来がどうなるかは,だれにも断定できません。

 しかし,複数の想定のもと,その想定ごとに複数のプランを用意していく必要があるでしょう。

 1つにしぼる必要はありません。

 生存戦略のキーワードが「多様性」「共生」であることを,疑うべきではないでしょう。

 世界史からどのようなヒントを得るべきでしょうか。

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忘れる・寝かせる・教えない~思考の整理学

思考の整理学 (ちくま文庫)
外山 滋比古
筑摩書房
1986-04-24


 聖書や好きな漫画などを除けば,人が一生のうちで,何度も読み返す本というのは滅多にないだろう。

 外山先生の『思考の整理学』は,読み返す価値のある本のうちの一冊である。

 週刊ポストの12月2日号では,「なぜ『思考の整理学』は売れ続けるのか?」という特集が組まれていた。

 齋藤孝,佐藤優らがその内容の素晴らしさを紹介している。

 外山先生は,アナロジー思考に優れている。

 「知識より思考が大切」ということを,グライダーと飛行機を用いて説明されている。

 グライダー型は自力では飛べない。

 自分の力で飛べる力を身につけるためには,どうしたらよいのか。

 今の教育は,子どもたちに丁寧に「教えすぎている」という主張は,的を射ている。

 「教えない」

 考えを「寝かせる」

 「大事なことはメモしない」

 東大生や京大生がこれを読んで,とても新鮮な気持ちになれるのは,今までかかわった先生たちと逆のことを外山先生が重視していることに気づくからだろう。

 私の場合は,外山先生もわずかな期間だが勤務されたことがある,飛行機型を育てる学校に通っていた。

 だからこそ,外山先生の言葉に共感できる。

 外山先生の本は,東大生や京大生ではなく,

 自分の子どもを東大や京大に入れたがっている親に読んでもらいたい。

 子どもの可能性を伸ばす教育とは何かがよくわかるから。




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歴史を学ぶ意義~教養としての「昭和史」集中講義



 筆者は冒頭で,「歴史を学ぶ意義」についてやや長めに語っています。
 
 それは,大学での歴史の講義にさほどの興味をもたない学生たちに手を焼いているセンセイ方の声を代弁しているかのように思えます。

>・・・ある判断を下す際の材料ないし手がかりとして歴史は有効なのです。歴史とはいわば過去のデータベースですから,それを参照していまの文脈に当てはめてみる。そういうふうに考えれば歴史は無味乾燥なものではなくなります。
 言い方を変えると,今日的な関心がなければ,過去にさかのぼる必要はない。歴史を学ぶ意味はないとさえ私自身は思っています。


 なるほど,と思わされます。

 中学校では,地理的分野と歴史的分野を並行して学習した後に公民的分野という現代社会の政治や経済,国際関係を学ぶ順序になっていますが,これは実は逆なのかもしれません。

>いまのような先行きが不透明な時代に,先人はどのように行動し,それがどのような結果をもたらしたのか。もう一度,強調します。時代状況が違うので単純な比較はできないものの,他方で人間というのは劇的に進化するものでもありません。いつの時代も似たようなことで悩んだり喜んだりしています。人が行う選択の幅というのは意外と狭いものです。

 社会的な環境やその背景が異なっている時代のことを,そのまま現代にあてはめることはできないのは当然ですが,「同じような失敗を繰り返さない」ための知恵を得ることは不可能ではないでしょう。

 二大政党制の機能不全や限界について,昭和史から学べることは多い,というのが本書のテーマにもなっています。

 もし東日本大震災のときに,民主党が自民党に首相のポストを譲る覚悟で協力を要請していたら,復興のスピードも変わっていたかもしれない,という著者の主張にも納得がいきます。

 政党のエゴがいかに醜いものであるかは,今も昔も変わっていないでしょう。

 より重要な対外関係の問題を抱えているのに,景気対策を優先して「票を稼ぐ」ことばかり考えてしまう「目先の経済的利益主導型民主主義」が続いていることにも気づかされます。

 そこで思考停止せずに,前に進むためのアイデアを,今ではなく歴史から探っていこうとする態度は,改革を行っていく上でも重要にしてほしいものだと思います。

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ポピュリズムと言ってすませるわけにはいかない~グローバリズム以後



 朝日新聞デジタルで紹介されている内容ですが,

 トッド氏は,10月初めの日本での講演で,「トランプ氏とクリントン氏の勝率は半々だ」と言っていたようです。

 その根拠は明確でした。

 上記の本でも,トランプ氏の支持層の「反乱」には理があることを述べています。

 人類学者・歴史学者であるトッド氏は,アメリカ人の平均生活レベルの低下に伴う白人死亡率の上昇に注目しているようです。

 民主主義にこだわる人が,ポピュリズムを非難することにも疑義を呈しています。

 白人大衆層がトランプ氏を選ぶことを,ポピュリズムと言ってすませてよいのか。

 人々の不安や意思の表明をポピュリズムと呼びことはやめよう,と述べています。

 人類学的には,アングロサクソンの人たちは不平等に寛容である。
 
 しかし,不平等に寛容という「力」に,経済や階級,利益の対立という「力」が優っている。

 「マルクスが生きていたら,結果に満足したかもしれない」状況になっている。

 歴史の大きな転換点にさしかかったのかもしれません。


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