教育失敗学から教育創造学へ   (読書編) ~子どもの教育に情熱をかける人々のために~ 

小学生と大学生の親です。 このブログでは,読書から得られた発見や視点を中心に,子どもの教育について考えていることを書き綴っていきたいと思います。

2017年01月

2017年,日本が最も世界を知る時代になるか~戦前日本の「グローバリズム」



 1930年代は,軍部の台頭,ブロック経済,国際社会からの孤立,という「わかりやすい図式」でその歴史をあっさりとわかったつもりになってしまっている時代である。

 これからの子どもには,もう一歩踏み込んだ1930年代像を形づくらせることが大切である。

 中学校,高校の学習で,最も深く学ぶべきは,この1930年代の歴史である。

 なぜなら,とてもよく似た変化が今の世界で起こっているから。

 「日本が保護主義に反対し,経済的な自由主義の下で輸出を拡大し,世界市場の開拓を進めて,諸外国と摩擦を生んでいた時代はいつですか」という質問に答えられる歴史像を描かせる必要がある。

 国際連盟からの脱退を,単純に「世界を敵に回した」と理解させるのではなく,かえって世界の国々に対する理解が深まっていった経緯を学ばせることで,「トランプ大統領の政策によって,世界の国々の動きがとても見やすくなった」と言える子どもを育てることができるかもしれない。

 1930年代は,どの国も似たような「全体主義」的な国内体制を模索していた。

 日本は協調と平和を意図しながら,結果は対立と戦争へと導かれた。

 それはなぜなのか。

 次の,世界の壊滅的な危機の時代に備えて,せめて,

 「こうした国の動きが対立と戦争を生んだ」ということを語れる子どもをつくっていきたい。


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豊富で良質な図版が入試問題に使われる可能性あり~21世紀の資本

21世紀の資本
トマ・ピケティ
みすず書房
2014-12-09


 5500円(税別)もする本を,中学生が持っていた。

 その中学生は,学校の図書館の蔵書に加えてほしいという要望を1年以上もっていて,それがようやく叶った。

 図書館に入った本を,私が今,手に取っている。

 本文608ページ,注釈等が98ページの厚さ4.5㎝のこの本で,目を奪われたのは豊富な図版資料である。

 中学校2年生の歴史のテストで使えるものが見つかった。

 すでに,大学等の入試問題で使われている図版はあるだろうか。
 
 小論文で使えそうなものも多い。

 ピケティの主張でよく紹介されるのは,

>果てしない格差スパイラルを避け,蓄積の動学に対するコントロールを再確立するための理想的な手法は,資本に対する世界的な累進課税だ(489ページ)

 という部分である。

>資本主義がもっと平和で永続的な形に変換されるような21世紀は想像できるだろうか,それともひたすら次の危機や次の大戦(今度は本当の世界大戦になる)を待つしかないのだろうか?

 という問いに対する答えの一つである。

 当然,経済の専門的用語も多く,よく中学生が惹かれたものだとも思ったが,上記のような中学生でもわかりやすい部分もある。

 日本のことについては,「富裕国の税収(総税収/国民所得)」の推移を示したグラフを見ると,日本が入っていなくて少しほっとした面もある。もしこのグラフに日本も入っていたら・・・。財務省あたりが喜んで使いそうな資料となってしまいそうである。

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戦前と変わらない官僚の出世パターン~常識から疑え!山川日本史



 戦前に官官接待が必要だった理由がよくわかる部分を引用します。

>当時,軍で出世するために一番大事なことは何かと言うと,大蔵省から予算を取ってくることでした。とくに陸軍では,大蔵省主計局の官官接待に全力をあげていました。これで出世した官官接待の名手こそ東条英機であり,その直系である武藤章です。(中略)

 東条とは対照的に,髙橋是清蔵相に論破されて予算を取れなかったために失脚したのが荒木貞夫陸相でした。
 
 要するに,「軍部」が暴走したなどというのは嘘っぱちで,実は大蔵省のほうがはるかに権力を持っていたということです。

 しかし,戦後,絶対権力を持つ占領軍の目が光っているところで本当のことを言ったら目をつけられてしまいます。だから大蔵省は徹底的に陸軍を悪玉にし,「二・二六事件以後は軍部の言うことを聞くしかなかった」という歴史観を吹聴しました。「軍部」悪玉論の期限はここにもあります。


 「わかりやすい」悪役,悪玉は,歴史を理解するのにとても便利なので,小学校から高校まで,「軍部」という言葉が使われてみんな納得してしまっていますが,「軍部」は満州事変のころの「中国」と同じようなもの,と認識できるレベルになれば,「深い理解」と呼べるようになるのでしょう。

 中学校レベルでも,陸軍と海軍は予算の獲得競争を行っていたこと,戦争を想定した相手国が異なっていたことを学ぶことが可能です。

 お金を握っている大蔵省,現在の財務省と文部科学省との関係は,文科省と国立大学,私立大学との関係にも似ています。

 どういう人が出世できるのか,出世した後,どういう甘い汁が吸えるのか,道徳の教科書にでも記載したいような出来事が,新聞紙上で子どもでも読むことができます。

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第一次世界大戦から外務省が学んだこと~文藝春秋SPECIAL2015年秋号



 もともとは,現場にツケを回す上司のあり方の問題を話題にするためにこの本を選んだのですが,

 「第一次世界大戦から日本が学んだこと」の情報を探していて,それがたまたま見つかったので,ここに記録しておくことにしました。・

 冒頭の佐藤優さんの文章の,外務省関係の話です。

>外務省は早くから「負ける」とわかっていた(これは第二次大戦の話)から,戦時中に若手のエリートをヨーロッパに研修に出した

 ために,比較的トップエリートは温存されて戦後にいたった,

 という話も面白いのですが,

 戦後がこうして「外務省の時代」になった(幣原喜重郎,吉田茂,芦田均は外交官出身の首相でした)背景には,第一次世界大戦での「失敗」体験があるというのです。

>ベルサイユでは,他国の代表同士が何を話し合っているか全然わからない。日本は主要五ヵ国の一つとして参加したのに,まともな要求や口出しができませんでした。

>「本格的に留学させて,完璧に話せる官僚を育てなくてはダメだ」という考えに至った


 という外務省の事情がわかりました。
 
 戦前には,陸海軍が資源や予算の配分をめぐって対立していたことは有名ですが,セクショナリズムはいまだにありとあらゆる組織に受け継がれています。

 文科省から始まった「天下り問題」が自分のところに飛び火することを恐れている人事部もあるでしょうが,

 「あんな低レベルなヘマはしない」と自信満々で口裏合わせをし,待機している省庁ばかりかもしれません。
 
 できたら,足の引っ張り合い,暴露合戦を経験してもらって,やがて訪れるかもしれない次の戦いの前に,

 「組織の失敗の構図」を思いっきり味わっておいてほしい気もしています。

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中身がからっぽの授業がよくわかる~アクティブ・ラーニングのための評価がわかる!

アクティブ・ラーニングの評価がわかる! [ 西川 純 ]
アクティブ・ラーニングの評価がわかる! [ 西川 純 ]
 
 この本の良心的な点は,「こんな本を読まなくてもアクティブ・ラーニングの評価はできる」と書いてあることである。できたら表紙か帯に書いておいてほしかった。

 本の中に,アクティブ・ラーニングを実践しているという小学校教師の「授業記録?」が引用されている。

 空虚としか言いようがない。

 内容がないのは小学校だから仕方がないとしても,これが教育の「記録」だとしたら,

 小学生の日記の方がまだましだろう。

 かつて,教育を公に語る小学校教師たちは,豊かな「語彙」をもっていた。

 32字×31行の中でやけに目立つ言葉は,

 「素晴しい」「子どもたちの凄さ」「感激」「子ども達の力に脱帽」「子どもたちは有能だ」「感動した」というもの。

 親ばかの子育てブログのような文章である。

 こういう「評価」で子どもが伸び伸びしているだけで親も満足できるのは,せいぜい小学校低学年までだろう。

 残念なことに,題材から小学校6年生の課題であることがわかる。

 しかも,歴史の誤った理解を見過ごしている証拠まで示している。

 白紙に戻した後,中学校で学び直せる内容だから,致命傷にはならないのがせめてもの救いである。

 「深い理解」などを語れるレベルの話は何もない。

 そもそもそんなものを子どもや教師に期待していないことがひしひしと伝わってくる。

 筆者本人も,「深い学びができるのはクラスに何人いると思っているのか」

 と平気で開き直っている。

 「思考力・判断力」に該当するような話題が一切ない本が,よく「評価」などというタイトルをつけて出版できたものである。

 まさかこんな教育観が普及するとは思えないが,小学校教師向けなら見逃してもよいかもしれない。

 教育学部とか教職大学院というところでやっていることのレベルを知りたい人には,最適の1冊である。

 アクティブ・ラーニングで将来の結婚相手を見つける男女を交流を,なんていう主張を真面目にやっている人には,ぜひとも一度,どこかの中学校で管理職を経験してみてほしい。

 教育困難校や過疎地の現実を目の当たりにした身としては,いい加減な未来予測や脳天気な子ども観で現場を破壊される手前で食い止めてあげたい。


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