紹介したのは,週刊東洋経済の佐藤優さんのコラムで引用されていた本です。
私は教師として現場に二十数年過ごしてきましたが,子どもたちは論理と修辞のバランスがとれる先生のことを好きになる,ということがよくわかってきました。
理屈っぽい教師は,嫌われます。
渡部氏の本によれば,
>ローマ時代も,論理学の本の表紙には「げんこつ」が描いてあり,修辞学の表紙には「開いた手のひら」が描いてありました。
ということで,理屈っぽい教師は,「げんこつ」型のハードな言葉で子どもを屈服させている,というイメージになります。手のひらでさすってくるようなソフトな教師がすべて好かれるかというと,実はそうでもありません。
詐欺師のように,心には思っていないようなことを,レトリックを用いて納得させようとする教師も嫌われます。
人間関係でこじれた子どもを救うには,教師の側の論理だけ,修辞だけではだめです。
子どもが自分なりにレトリックを解釈し,自分のものにして,論理的にまとめる段階まで持っていかないと,後々まで尾を引くことになりかねません。
教師自身も下手な道徳の授業をすると,子どもから本性を「丸裸」にされてしまうのです。
渡部氏がレトリックによる説得に関して挙げている3つの原則のうち,最初の
>自分が説こうと思っていることに確信を持つことです。自分のほうが正しいと思っていなければ,何をどうやっても,説得に迫力が欠けてしまいます。
の意味を,佐藤優さんは,誠実性やモラルの面から重視しているようです。
教師自身が,どの程度の向上心をもっているか,子どもから見抜かれるのはつらいものです。
自分の仕事に誇りを持っていない人間から受けるキャリア教育ほど,最悪なものはないのです。
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