教育失敗学から教育創造学へ   (読書編) ~子どもの教育に情熱をかける人々のために~ 

小学生と大学生の親です。 このブログでは,読書から得られた発見や視点を中心に,子どもの教育について考えていることを書き綴っていきたいと思います。

2017年12月

日本の教育のどこが問題なのか?~なぜ私たちは生きているのか



 シュタイナー人智学とキリスト教神学のエッセンスを知りたいと思い,読んでいたら,教育の話題も取り上げられていた。その内容があまりに的確だったので,ここでご紹介したい。

 大きな生きた身体である社会は,「法=国家生活」(平等),「経済生活」(友愛),「精神生活」(自由)が有機的に結合している生命体であるというシュタイナーの考え方の紹介から,社会の力をどう強化していくべきか,という対話の流れの中で,沖縄問題や教育の話題が登場した。「精神生活」の領域を中心(土台)にすえるべきだが,現状は,「経済生活」が土台にあり,その上に国家が法生活として君臨していることの問題であり,社会の力がより弱められる方向へと教育が役立っている(?)という。

高橋巖>いまの学校は地獄のようないじめの温床になってしまっています。

佐藤優>学習システムを偏差値で判断する環境ですからね。・・・大学に進んでも,それまでの受験勉強の延長で,偏差値教育の延長にあるGPAを上げることを目的とする勉強をしてしまう・・・

高橋巖>子どもは純粋なので,自分たちがいつでも数値で比較されていることを,白紙状態の魂にたたき込まれます。

佐藤優>文科省が進めている,大学のスーパーグローバル化も問題です。難関私大で教えている日本語ネイティブの先生に,日本語で話す場合と比べて,英語だとどれくらいを伝えることができるかを聞いたら,3割だそうです。そのうち学生がどのぐらい把握しているかを聞いたら,2割だと言うのです。3割のうちの2割なので,日本語で伝えた場合の6%しか,知識が伝達できないような状況になってしまっています。もう十数年もすれば,軌道修正されるのでしょうが,その間に高等教育を受けた人はご愁傷様です。


 数値での評価は,東大の研究不正でもわかるように,いくらでも誤魔化せる代物である。

 研究の世界ではさすがに不正を見破るためのコストが必要だとわかり始めるだろうが,教育の世界で行われている数値による評価がいかにいい加減かを証明しようとしたら,相当のお金が必要になる。

 予算をもらっている方もバカではないから,高い評価が出せるような仕組みを考えて,「客観的なデータ」として不正なしに自己を正当化し,次の予算も獲得できるように努力する。

 教育の世界でそういう動きをしていることが子どもに伝わったら,どんな悪影響ができるか計り知れない(というより,すでに大学にいる山のようにいる「勉強嫌い」の学生たち,「指示待ち」の学生たちが,教育の失敗を体現してくれている)。


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アメリカかぶれの人間が日本の教育界で役に立たない理由~大日本史

大日本史 (文春新書)
山内 昌之
文藝春秋
2017-12-20


 歴史総合という科目が高校でつくりだされるが,このお二人にぜひ教科書を執筆していただきたいものである。

 日本の歴史を語っているかと思えば,アメリカやロシアの話が入ってくる。その逆もある。

 西部開拓→大陸鉄道を敷く→カリフォルニアでフロンティア終焉→太平洋を渡る→日本に進出→北海道開拓という繋げ方も面白い。
  
 高校ではノートのとり方も,大きく変わっていくかもしれない。

 中央に「黒船来航とリンカーン」というテーマ名が入って,渦巻き状に事実が流れていき,関係性を示す内容が隙間に入っていくような・・・。

>チェコの神学者フロマートカは第二次世界大戦中にアメリカに亡命して,あることに気づいた,と記しています。アメリカ人はドストエフスキーもカール・バルトもわからない。興味を持とうともしない。そのかわりに,つねに「それが現実にどう役に立つんですか」と問うてくる,と。つまり,プラグマティズム(実用主義)です。

 どこかで読んだ気もする話だが,アメリカ人に「ロマン主義」という思想が欠如しているのは,ヨーロッパでロマン主義華やかなりし頃に,アメリカ人はひたすら開拓に励んでいたからではないか,と佐藤さんは考えている。

>開拓には内面も必要ないし,歴史はまだ存在していない。そこで問われるのはただ「役に立つかどうか」です。しかも,それをアメリカ人は自分たちのローカルな価値観だとは思っていない。人類に普遍的な価値観だと思っているのです。

 ここまで読んで,アメリカかぶれの評判の悪いガクシャが,どうして「日本向き」でないのかがよくわかったような気がした。

 学生にも評判の悪いガクシャの話法は,開拓時代に起源をもつアメリカ人と一緒なのだ。正しいことを言っているのはオレであり,あんたたちじゃない,という話法。

 「自覚なき帝国主義」ほど質の悪いものはない。

 ただ,今の日本を浸食しているのは,「自覚なき帝国主義」の現代版である「新自由主義」。

 ヨーロッパ人は,まだ自分たちがやっているのは植民地主義だという自覚があるのに対して,アメリカ人にはそれがない。

 日本のキリスト教を主導した内村鑑三や新島襄が,もし人種差別を受けなかったら・・・アメリカ型プロテスタントが根付くことも不可能ではなかったかもしれないが・・・。

 新渡戸稲造らが,日本人としてのアイデンティティを強く意識することになった経緯がなかなか興味深い。もしかしたら,アメリカは,諸外国の人々に,民族としての自覚を高める教育をひたすらし続けてくれている国なのかもしれない。

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多様性があったから危機を乗り越えることができた~「司馬遼太郎」で学ぶ日本史



 中学校社会科の歴史的分野は,時代の大きな流れの理解を主な目標としています。

 この「理解」というのは,それぞれの時代の特色や転換の様子を「自分の言葉」で表現できるようになっている状態のことで,ただ用語を暗記しているだけではダイナミックな説明ができないでしょう。

 「着眼大局,着手小局」という言葉がありますが,歴史上の人物の働きを通して,「着眼大局」の具体例を示してくれるのが司馬文学です。
 
 司馬遼太郎は中学生にはまだ少し難しいかもしれませんが,磯田さんのこの解説本なら大丈夫。
 
 たとえば司馬遼太郎が明治維新をどう捉えていたか。
 
 江戸時代の遺産とは何か,などは,とても参考になります。
 
 武士の政権は倒されるわけですが,ビジョンがないまま新しい政府が動き始め,始まってから欧米に調査に出かけるという状態でした。しかし,薩長土肥に限らず各藩には優秀で多様な人材が多くいて,反対一揆は起こるものの,次々に制度を整えていくことができました。
 
 江戸時代の遺産がなければ,内戦が続いているうちに,欧米列強が日本の一部を植民地にしていたかもしれません。
 
 坂本竜馬の特質にも触れられていますが,司馬史観が大嫌いな先生たちがつくった計画によれば,新しい高校の教科書には坂本竜馬は登場しないそうですね・・・。

 今の日本の教育の世界には,真の「多様性」がありません(認められていません)。
 
 一度ダメになったときは,全滅状態になる恐れがあるのが今の日本の教育です。
 
 教育の世界だけではないかもしれません。

 新しい学習指導要領に示されていることは,「着眼大局,着手小局」の逆で,「着眼小局,着手大局」の教育実践へと導く恐れのある,行政主導の危険な内容です。
  
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歴史は繰り返す。しかし,歴史に学ばぬ者は~世界史講義



>同じ状況で同じ過ちを繰り返す(チャーチル)

 歴史を「失敗」に置き換えても同じことが言えるでしょう。

 日本が南部仏印進駐に踏み切ったとき,アメリカによる石油の前面輸出禁止の判断は下されないはずだという楽観的な推測を持っていました。

 アメリカの方では,大統領や国務省が,日本の暴発を恐れて,石油の輸出禁止はやめておくという方針をとっていましたが,他の仕事に忙殺されているときに,禁輸措置が発動されてしまったようです。

 計算違いは,日本にだけあったわけではありませんでした。

 幕藩体制と現代の日本を重ねてみるという著者の視点は興味深く,日本に「明治政府」の再来が求められているという主張も暴論ではないと見ることができます。

>幕藩体制=人口増加を前提とした現在の社会システム

>鎖国=人口増加

>帝国主義=人口減少

>明治政府=人口減少に対応できる新しい社会システム


 人口減少という「黒船」に対して,政府は「人口をいかに増やすか」という倒された幕府と同じような姿勢をとっているという見方は面白い。

 安定した成長という心地よさから抜け出せず,痛みを避けて通ろうとする政権中枢の性癖はどうしたら治るのでしょう。

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あったものをなかったと言える人間たちがつくる国家~これからの教育



 文部科学省にも,まともな人がいたんだという意外な発見ができたのは,前川元事務次官のおかげである。
 
 上の意向には絶対に逆らわず,

 あったものをなかったと言える人間しかいない場所だと思っていた。

 前川元事務次官の次の言葉は,これからの日本のなれの果てを知る上でも,心にとめておくべきものだろう。

>政治の世界では今,国家主義新自由主義が結びついているのを感じますね。一人ひとりはお国のために尽くすべきだという復古主義的な考えが台頭してきて,それによって国民を束ねようとする力がはたらく一方で,市場において自由競争を徹底させればすべてうまくいくといった市場原理主義が幅を利かせていて,この両者が結びついている。

>主体性のある個人と個人が結びついてパブリックな社会をつくるのではなく,あらかじめ「お国のため」というイデオロギーを強く打ち出して人々をガチッと束ねる一方で,あらゆるものが市場で取り引きできるよう,その範囲を思い切り広げて,弱肉強食の競争をさせる。その競争に勝った者が正義なんだという,そんな空気が蔓延しています。

 要は,下々のものは何も考えなくてよい,議論の必要はない,という姿勢なのである。

 「下々」の中には,文部科学省という中央官庁も含まれる。

 教育や研究の分野では,競争原理の導入によって,プラスの効果よりもマイナスの効果の方が際立って増えてきているのではないか。

 自分の研究や学生への指導よりも,作文にかける時間が膨大になっている。

 成果を作文ででっち上げるのは昔からあったかもしれないが,東大などで起こった不正のように,データの捏造で研究費を獲得する行為が横行するようになると,信用失墜によるデメリットは国家全体を覆うことになりかねない。

 獣医学部新設については,寺脇研氏が発言しているように,農水省が戦略特区の協議の場で「獣医師の需要は今後低下する」と主張しているのに,完全に無視されてしまっている。

 事実1 動物病院の獣医師は,十分に足りている。
 事実2 産業動物獣医は不足気味で,公務員獣医が足りていない。

 事実2の背景 待遇が悪いから。

 政府の対応 自由競争に任せればうまくいく。    
 加計学園の対応 新設する獣医学部の定員は160名。
 全国の獣医系の学部・学科の定員合計930名。国立大1校あたりの定員は30~40名。

 加計学園が設定した定員数の根拠の予想 儲かるから。利益率を上げるため。 

 今後の予想1 獣医師が余る。
 今後の予想2 教育の質が低下する。
 今後の予想3 獣医師の質が低下する。 
 今後の予想4 予想1~3が起こらないように,国家試験が難しくなり,
        獣医師になれない卒業生(相当の学費を費やした人たち)の数が増える。
  
 獣医学部の定員増が本当に必要ならば,新設ではなくて,これまで定員増を希望していた他大学の定員を増やしてあげればよいだけのことなのに・・・。

 他国の属国として,日本という国の価値を低めた方がよいとする人間たちが国家の中枢を担っているのであれば,狙い通りの結果になっているというわけである。

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