リンゴが教えてくれたこと (日経ビジネス人文庫)
木村 秋則
日本経済新聞出版社
2013-06-04


 農薬でつくる果物とよばれるほど病害虫の多いリンゴを,完全無農薬・無肥料で栽培することに成功した木村さんの「待つ力」の由来はどこから来るのでしょう。

 自然なリンゴ栽培の難しさは,品種改良があまりに行われてきたため,原種から程遠いものになってしまったせいでもあるそうです。それは,米や野菜は無肥料,無農薬でも意外とスムーズに成功したことからもわかります。

 リンゴの木をリンゴの育ちやすい環境で育ててあげること,リンゴを主人公と考え,リンゴの生長の手伝いをする感覚で育てること。

 子育て,学校教育,受験指導,あらゆる「教育」にかかわる取り組みにおいて,大人が考えなければならないことは,子どもにとって,よりよく育つための環境は何か,今の環境は子どもにとってどうなのか,ということではないかと訴えかけられる本です。

 私は先日,自然農法の茶農家さんを2件ほど訪問させていただきました。

 両者とも,木村さんと同じようなことを口にされていました。

 茶はどのように育ちたいのか?

 人間の都合で,人間が育ってほしいと思うように育てられる農産物。

 人間を育てることと農産物を育てることはもちろん違うことですが,

 育てる側の都合で無理を強いている面があるという意味では同じでしょう。

 リンゴに限らず,農産物を育てるには「土が大事」というのは以前から知っていましたが,

 地下数十センチの世界の話はあまり聞いたことがありませんでした。

 そこに手を加えることは,人間でないとできない。

 教育も,大人でないとできないことがきっとあるはずです。

 スマホや携帯電話があまりにも子どもの生活と密接になってしまっているために,

 それを教育に利用することを真面目に考え始めている人たちがいます。

 便利なものを次々に活用することで,子どもたちは「満足度」の高い学習ができるかもしれませんが,

 本当に地中深く根を張り,養分を大地から吸収していく人間に育っていってくれるでしょうか。

 学校で農業のことを学ぶことの意義は,

 農業の知識や技術を手に入れるためではなく,

 人間の生き方を考えるきっかけになることです。

 一度,お子さん連れで農業を学ぶ旅に出かけませんか。

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