出題ミスは,このような本の形で永遠に残ってしまうので,作題側は細心の注意を払ってつくっているのですが,今年の入試では「やってしまいました」。

 映画『天地明察』が出題のテーマのきっかけだったのでしょうか。

 問いたい知識は,「の時代に郭守敬が」授時暦を作った,ということだけでした。

 正解が2つある,という問題になってしまった原因は,作題者が世界史の知識を十分に持っていなかったからではなく,出題のときに十分に気をつけなければならない「日本語の使い方の誤り」を犯してしまったことにあります。

 世界史Bの第4問の問8です。

 貞享暦は,中国の( ア )の時代に,( イ )によって作られた授時暦を改訂して,日本の実情に合うようにしたものである。

 ここでは選択肢は載せません。選択肢を載せなくても,解答が2つ考えられることが,文章だけからわかるからです。

 冒頭で述べたように,授時暦をつくったのは,郭守敬という人です。世界史用語集(山川出版社)では,元代の科学者・官僚で,1280年に授時暦を作成したと紹介されています。

 ( イ )には郭守敬しかあてはまりませんが,( ア )にあてはまるのは,「元」とは限りません。

 なぜなら,貞享暦がつくられたのは,中国でいえば清の時代だからです。

 中国の( ア )の時代に・・が,授時暦を改訂して,日本の実情に合うようにした

 と解釈してしまうと,( ア )にあてはまるのは「清」になってしまうのです。

 ですから,問題文としては,

 中国の( ア )の時代に( イ )によってつくられた授時暦を改訂して,日本の実情に合うようにしたものが貞享暦である。

 などとするべきでした。

 このようなミスはどのようにすれば避けられるのでしょうか。

 一番よいのは,世界史をあまり知らない,国語の問題の作題者に解いてもらうことです。

 国語的におかしい(どちらにも読み取れる)ものが,見つかるはずです。

 世界史の作題者は,「元の時代に郭守敬が授時暦をつくった」という知識を問おうとしただけでした。

 しかし,それだけだと問題としてあまりにもつまらないために,「貞享暦は江戸時代に授時暦をもとにつくられた」ことをわざわざ挿入してしまいました。

 単なる知識を問うているセンター試験は廃止が決まっていますが,出題者の力量が相当に落ちてきていることが,廃止の真の原因かもしれません。

 にほんブログ村 本ブログへにほんブログ村 本ブログ 読書備忘録へにほんブログ村 教育ブログ 教育論・教育問題へにほんブログ村 受験ブログへにほんブログ村 受験ブログ 受験生の親へ