ちょっと前に出された『2020年激変する大学受験!』(学陽書房)と比べると,はるかに内容が濃く,実際の「大学受験」がどのように変化するのか(実際には,すでにどのような問題が出題されているのか)がわかります。

 大学の教師が書く本より,よほど切実感があり,中学校・高校の現場での実践も行っている方が紹介している内容は,示唆に富んでいます。

 読み応えを感じたのと同時に,この変化は教育の質を向上させるというよりは,激しい混乱を招き,むしろ学校教育のレベルを押し下げる圧力になりそうな予感がじわじわと湧き出してきました。

 特に公立高校において顕著な現象としてあらわれるでしょう。

 授業参観をしてしまえば,「公立中学校よりレベルが低い」ことが,よりばれやすくなってしまうからです。

 「こういう受験に変わるのならば,やはり学校より塾で学んだ方が成果が上がりやすいだろうな」という印象を強くもたれる結果になるでしょう。

 塾や予備校も激しい生存競争を繰り広げていますが,生き残りをかけているからこそ,本書のような内容には敏感に反応でき,高度な機動力で「実験」を繰り返し,より効果が高い教材を生み出すことが可能だからです。

 公立高校のように,つぶれる心配はない,教師が余計な苦労をしたところで,給料が上がるわけではない場所で,どれほど真剣に「正解のない問題」に授業で取り組ませることが可能でしょうか。

 基本的な想定は「小論文」のイメージでよいと思うのですが,「道徳」というより「倫理」の内容にかかわることをしっかり学び,自分の言葉で書けるようになった生徒が,よい成果を上げていきそうです。

 中学校では,「考える」道徳=「書かせる」道徳の時間を増やせば,2020年入試への対応力も増していくかもしれません。

 これまで「お荷物」扱いだった「道徳」の時間が,受験勉強の役に立つ,なんていう話を持ち出せば,今までとは違った「教科」として成立し,「受験問題作成」も夢ではなくなってきそうです。

 入試を担当した経験のある私でなくても,夢のような入試問題には,「だれもが納得できる評価が出せない」という最大の壁が待ち受けていることは容易に想像できるでしょう。

 かけ声倒れの予想は,すでに現実のものになってきていることもご存じだと思います。

 本書のタイトルの賞味期限は,案外と短いものかもしれません。

 もちろん,タイトルを変えることで,読み継いでいくことが可能な内容を備えていることも確かです。

 あとは,実践校の「成果」が待ち遠しい限りです。


 にほんブログ村 本ブログへにほんブログ村 本ブログ 読書備忘録へにほんブログ村 教育ブログ 教育論・教育問題へにほんブログ村 受験ブログへにほんブログ村 受験ブログ 受験生の親へ教育問題・教育論 ブログランキングへ