EUとは,そもそも「将来への危機感」から出発した組織です。
EUの人々にとって,今週の最大の関心事は,イギリスの国民投票の結果でしょうが,その結果のいかんにかかわらず,フランスやドイツも「このままでは・・・・」という将来への危機感を抱き続けているに違いありません。
フランスの経済学者は,日本の長期低迷をどう見ているか。
「その前」の日本経済の快進撃をどう振り返っているか。
もともとはヨーロッパ向けの本だったようですが,日本の学者もしっかりチェックしていたようです。
書評では,
>グローバリゼーションでは,米国的な方法論が唯一の道ではありません。
という指摘とともに,日本では構造改革の後れが問題だと言われているが,そうではなく,
>従来からの制度を考慮せずに改革を進めて一貫性を損なったから長期停滞を招いた
という見方があることを紹介してくれているとしています。
経済界だけでなく,教育界もこういう内容はチェックしておく必要があります。
たとえば,東京都の教育は平成十年ころからの改革によって,「長期停滞」が始まってしまっています。
今は何と,管理職や指導主事のなり手がいない,という組織にとって致命的な事態に陥っている。
「停滞」ですめばまだまし。「壊滅」に向かわないことを祈ります。
同じような変化が,国の方では,「資質能力」を重視していこうとする学習指導要領の大きな変革によってひきおこされようとしている。
「内容ベース」ではなく,「能力ベース」で教育の一貫性を作っていこうとする改革が,すべてを台無しにするおそれがあることを,企業の能力主義の失敗から学べないといけないのです。
このことを本書は予言してくれているようです。
高校をこの方法で改革しようとすると,せっかく「一貫性」をかろうじて残しながら改革を進めていた小中の教育まで,破壊されかねません。
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