20~21頁に紹介されている,「漢字廃止論の妄」という国語学者の主張が面白い。

 発表されたのは,昭和14年。1939年の話である。

 明治以来,現在に至るまで,教育行政が全く同じパターンの誤りを犯している点を指摘・・・というか,予言してくれている。

>所謂やつて見る主義が世を毒し人に禍(わざわい)したことも少なくありません。

 として,「小学生に英語を課したこと」「入学試験の廃止」「国語漢文の教授時数の頻繁なる変更」「役に立つ教育」などの「やつてみる主義」による教育改革の失敗が挙げられている。

>文部省が従前便利主義に立脚して改革を試みようとした者に,成功した例は殆どありません。所謂やつてみる主義で 教育其の者 教員多年の努力 を,一朝にして覆して平然たることが多いのは,どうした事でせう。

 アメリカやイギリスとの戦争が始まる前から,・・・明治のはじめからずっと,日本の教育行政は失敗を続けているが,それは子どもを「子ども扱い」すること,教師を「無能扱い」することが,一貫した最大の原因であろう。

 今や,大学の学長が小中学生レベルとして扱われている。

 小学生や中学生と同じように,大学の先生がレポートを書かされることに,著者のセンセイは大変ご不満なようだが,今や学長までが文科省の従順なしもべだから,喜んで報告書をさしだす時代である。

 高橋是清の「文部省廃止論」を読み返す人が増えてくれることを期待したい。

 もりかけ問題で薄れてしまっているが,天下りあっせんを堂々と続けてきた組織に,道徳教育の指導をさせる資格があるとは到底思えない。


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