ビジネスモデル2.0図鑑
近藤 哲朗
KADOKAWA
2018-09-29


 週刊東洋経済の記事で知ったのだが,この本は発売2週間以上前に,全文がインターネットで公開されたそうだ。発売前にすべての内容を公開してしまったのに,発売2日後には重版出来が決まったという。
 2600円というのは,少し高めの価格設定だと思うが,人は「全文公開しても,その内容が優れており,1冊の本として手元に置いて起きたい,という気持ちになるような立派な本なのだ」と購買意欲を高めるものだ,と考えられるのだろう。

 「非常識」の中にこそ強いビジネスモデルがある,というメッセージを,「発売前全文公開」という形で表現した背景には,「経済合理性だけでは足りない」という意識や,「稼ぐということへの嫌悪感」があったらしい。
 
 小学校の教師たちの中には,教育公務員なのに教育をビジネスの道具として利用する人間がいる。
  
 まさに今日,ある講演会の中で,講師が土日の「セミナー」や本の「出版」の例を持ち出していた。

 有料のセミナーを開いている教師や,教育実践を本にして出している教師たち(自分の大学)を持ち上げていたのだ。

 土日の勉強会を開くのに,参加者から金を徴収して自分の懐に入れるという発想は,中学校や高校の教員にはないのだ。また,よほどの人でなければ,中学校や高校の教員では単著を出せない。出せる人は,公立学校の教員など辞めてしまう。小学校の教員の場合は,「個人名で本が売れる」環境があるから,「儲けの道具」「大学教員になるための道具」になっている。

 私は何度も書いているが,公教育の立場にいる人間は,自分の仕事を金儲けの道具に使うべきではないと考えている。出世の道具に使うなとまでは言えないが,教育の成果を世間に広めたいのなら,ネットで公開すればいい。情報がいくらでも発信できるこの時代に,「本」でないと伝わらない,ということはない。

 小学校教員が,土日にヒマなのはよくわかる。この間に金儲けすれば,家族に還元される,というのもよくわかる。しかし,こういうサイドビジネスがなぜ放置されているのか,私には理解できない。

 私は,表紙に使われた(当時の)小学生たちが不憫でならない。将来(中学校に入って)どうなるかわからない子どもたちが,自分が死んでも顔が晒され続ける事実に抵抗を覚えても,手遅れなのである。文章までまともに読む子どもは少ないだろうが,「編集」された内容を読んだり,「種明かし」された「騙し技」を読んだりして,不快な気持ちにはならないのだろうか。

 子どもを金儲けの道具に使うのはやめてほしい。 

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