本書でもふれられている,道徳教材『星野君の二塁打』へのツッコミがネット上でも見られた。
日大アメフト部と同列にしては,物語の作者にもさすがに失礼だろうが,「決勝打を打った子どもが,監督の指示に従わなかったという理由で罰を受ける」という題材である。
小学校の道徳の教科書には,
>星野君のとった行動(バントのサインを無視してヒッティングをすること)をとおして,きまりを守り,義務を果たす(監督のバントのサインに従う)ことの大切さを考える。
>だれもがきまりを守らず,義務を果たさなかったら,どんな世の中になるでしょう。
という「学習の道すじ」が示されている。
この題材からは,「たとえバントを失敗し,チャンスの目がつぶれても,監督の命令に従ったのだから,だれも悪くない」ことも学べるのだろうか。修身の復活と呼ばれる所以がよくわかる。道徳の教科化という人災に対して,どのような減災対策がとれるだろうか。
>犠牲の精神が分からない人間は社会に出ても,良い仕事はできない
という教訓は,「あるものをなかったことにする」=良い仕事,「あるものをなかったことにはできない」=悪い仕事という風に解釈されるのだろう。
「監督の命令(ランナーを進めること)を見逃したことにして,より高い目的(相手に試合で勝つこと)を達成すること」は評価されないという価値観を教えられることで,せっかくグローバル人材になる資質能力をもった子どもも,スポイルされているのだろう。
監督やリーダーの命令には絶対服従,という精神は,やはり戦場でコマになる人間の資質能力としては重視すべきものである。
今の小学校教育はここまで「命令への服従の精神」を植え付ける指導をしないと,成立させられない状況になっているのだろうか。
違法再就職斡旋や子どもを裏口入学させる「偉い人たち」がいる組織が問題になるから,「世の中をいい方に変えよう」とする道徳心のある人が生まれます,という「答え」は小学生からは出てこないだろうが・・・。
>現在の政権になってから,全体主義的な方向に向かう流れは私も感じています。たとえば今年(2018年)から,小学校において道徳の検定教科書が導入されていますが,憲法の範囲を逸脱していると思われる内容が多く含まれていて,果たして「これが正しい価値観だ」と子どもたちに教え込んでいいものなのか,疑問に思いますね。
こうした道徳教育から子どもたちを守るための防災対策が求められる。
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